江戸時代の絵師、狩野了承による歳徳神図。
歳徳神とは元旦の福神である「歳神」(としがみ)の一種である。
歳神は地方や信仰によって性別も神の名前も様々であるが、特に「歳徳神」という場合には本図のような女神を指すことがおおい。
また、歳徳神は「恵方神」としての性格もあり、年ごとにこの神の坐す方角が変わり、それによって恵方も毎年変わる。
節分の丸かぶり寿司(いわゆる恵方巻)はこの神の坐す方角に対面して食する。
歳徳神は牛頭天王の妃神である頗梨采女と不可分一体といえるほどに習合し、祇園信仰における暦道(陰陽道)において中心的な地位を有している。
歳徳神は一般的には唐風の衣をまとった姿で描かれるが、本図は朱色の長袴を身につけており、どこか和漢折衷というべき雰囲気を醸し出している。
歳徳神の典型的な像容は元旦の象徴(門松・斎竹や鏡餅)を描き、着衣に日月のシンボルがあり、手に宝珠を持つというものだが、本図はこれらのシンボルのいずれも有していない。
ただし、着衣には竹と松が描かれており、歳徳神としての象徴である可能性がある。
本図の裏書きにおいて「歳徳 恵方神」と記載されていることから歳徳神と特定できる。
※狩野了承(かのう・りょうしょう) 1768年生、1846年没。狩野梅笑師信の養子であり深川水場狩野家を継ぐ。名を賢信といい後に了承と改名。
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